今回はGIBSONのESシリーズのひとつ、ES-335TDです。
まずはモデル・ネームの説明から。
ESとはElectric spanish(エレクトリック・スパニッシュ)の略です。ハワイアンでお馴染みのラップ・スティールのように膝に乗せて弾くのではなく、抱え込んで弾くタイプのギターのことを"スパニッシュ・スタイル"と呼んでいたそうです。今ではこちらの方が一般的ですけどね。
335は型番のようなもの。
TDはThin Body/Dual Pick Ups(シン・ボディ/デュアル・ピックアップス)の略。つまり薄いボディ(従来のアコースティックやフルアコと比べて)でピックアップが二つという意味です。モデル名がかなりの情報量を持っています。
…とここまで書いて気が付いたのですが、Dはダブル・カッタウェイの略だったかもしれません。すみません、記憶があいまいで…。調べてみますね。
1958年というまさにギブソン黄金期の初めにデヴューしました。ピックアップは当然P.A.F.です。(P.A.F.とはPatent Applied Forの略で”特許出願中”という意味です。ピックアップの裏にPatent Applied Forと書かれたシールが貼ってあるもののことをそう呼びます。なので特許が取れた後はパテント・ナンバーが 貼られます。)
ボディはメイプル。トップとバックは真ん中のセンターブロックと呼ばれる大きな木材を挟み込む形で接着されています。これがあるおかげでアーチのついたトップが落ちる(平らになる)こともなく、ボリュームを上げてもハウリングを起こしにくくなっています。
ちなみにセンターブロックがあるものをセミアコ、ないものはフルアコといえます。
センターブロックのない、ES-175のようなモデルはよく「トップ落ち」をおこします。弦を支えるブリッジが常にボディを上から圧迫しているため、構造上仕方ないことですが。
ネックはマホガニーで、指板はブラジリアン・ローズウッドです。この辺も時代によって仕様変更が行われます。ポジション・マークは初期がドット、そのあとブロックになります。
90年代にクラプトンが「From The Cradle」でドットの335を使用し、一気に相場が高騰したことを覚えています。クリーム時代はブロック・マーカーのチェリーの335を使っていましたが。
カラーはサンバースト、チェリー、ナチュラルがあります。
ただしナチュラルはもともと価格設定が高い上に希少なので、ほとんど見かけることがありません。ギブソンの場合本当に良い材が得られた時しかナチュラル仕様にはしなかったそうです。だから同じモデルでもナチュラルは高いのです。
上位機種にはES-345TDSVやES-355TDSVがあります。これらの仕様はまた改めてご紹介しますが、335との関係はレスポールにおけるスペシャル、スタンダード、カスタムの関係と似ています。同じシリーズに入門機種と高級機種を作って、それぞれ違う客層にアピールするという、ギブソンの常套手段です。
個人的には'65年ぐらいまでの仕様が好みです。
ブルース系の愛用者が多いように思いますが、ロックでもソウルでもファンクでもジャズでも歌謡曲でも演歌でも!なんでも対応できるギターだと思います。